吹奏楽を題材にした作品がどんどん増えています。
「響け!ユーフォニアム」はとても人気ですね。いくつか吹奏楽の小説を読みましたが、中でも印象に残っている作品「マエストロ・ガールズ~このコルネット憑いてます。」をご紹介します。
概要
天沢夏月 著『マエストロ・ガールズ~このコルネット憑いてます。』(小学館文庫)
女子高生の美香が帰宅途中のゴミ捨て場で見つけたのは、トランペットより一回り小さい金管楽器、コルネット。なんの気なしに美香がその楽器を掴むと、なぜか近くから女の子の声がした。
「あ、そこ触らないでほしい」
なんとそのコルネットには、かつての所有者で、天才演奏家だった少女・紫乃の幽霊が憑いていたのだ!
小さい頃から練習漬けで十七歳で病死したという幽霊の紫乃。普通の高校生活を送って青春してみたかった、という紫乃の願いを叶えようと、美香は吹奏楽部に入ることを決意する。
紫乃に体を預けることでコルネットが吹けるようになった美香は、学校にコルネットを持ち込み、突然天才的な演奏を披露して周囲を驚かせる。吹奏楽部からの誘いも受けて意気揚々と入部した美香だが、意外とキツい練習が続き、気持ちはだんだんと引き気味に。音楽の知識もないうえ、もともと努力なんて無縁の性格、何事にも真剣味が足りない美香の態度は、紫乃に怒らせるばかりか、クラスメイトの吹奏楽男子・川崎も苛立たせてしまって……。
天才幽霊少女とともに生み出す音色が、イマドキ女子高生を変えていく。感動の青春×吹奏楽小説!
吹奏楽作品、特に中学高校の吹奏楽部を舞台にした作品の定番は「吹奏楽コンクール金賞(代表)を目指す」です。

吹コンは吹奏楽小説やドラマの定番だよね
主人公が自分の楽器演奏技術を伸ばし、仲間と切磋琢磨、時にはぶつかり合い、念願の金賞(代表)のような。この時の主人公の気持ちの変化、幼い精神が一歩大人に近づくことが読み応えあります。
「マエストロ・ガールズ」はこういった定番でありながら、ファンタジー要素というか幽霊が出てくるのが、新鮮でした。天才な人間(生きている)はよく出てきますが、天才な幽霊が出てきて……というのは初めて読みました。
ここに惹かれた
ラスト号泣なのですが、そこは読んでのお楽しみです。
序盤のシーンでぐっと心つかまれたところをご紹介します。
天才演奏家だった少女・紫乃の幽霊が、女子高生の美香の体を借りてコルネットを吹くシーンがあります。この時、体を貸している美香にも意識は残っています。美香は今まで体験したことのない体の動き(唇を繊細に震わせる、舌や指の超絶的な動き)に驚くのです。

これ、すごく羨ましくない?
速いタンギングができなくて打ちひしがれること、よくあるじゃないですか(私だけですか?)。プロ演奏家が私の体に憑いている状態(かつ、私も意識が残っている)で、超絶タンギングで吹いてほしいです。どんな動きなのかを体験したいです。
これぞ究極の実践レッスン!?と、この小説を読んでいて考えました。
まとめ
楽器をやっている方は、もし超絶技巧な天才演奏家が自分に憑いたらを想像しながら読んでみて下さい。
天沢夏月 著『マエストロ・ガールズ~このコルネット憑いてます。』(小学館文庫)
あ!別にホラーで恐怖な小説ではないのでご安心ください。